グラウンディングGrounding
答えの文を実際の根拠につなぎ留めること
- グラウンディングはAIの発言を実際の根拠につなぎ留める作業です。資料をそばに置くこととは別の段階です。
- 文の一つひとつがどの資料のどの箇所から出てきたかつながっていて初めてつなぎ留められた状態です。
- かける場所のない話はしないことも含みます。「資料にない」と答えることもグラウンディングです。
- 出典が付いていても全部つながっているとは限りません。原文が本当にその話をしているかは別に確かめる必要があります。
- 根拠にうまくつなぎ留めておくと幻覚が減り、間違ったときにどこでずれたかをたどりやすくなります。
目次
1たとえで理解する
釣り船はよい場所に着くとまず錨を下ろします。潮の流れは穏やかに見えても休みなく船を押すので、錨綱をかけずにいると十分後にはまるで違う場所で釣り糸を垂らしていることになります。船の上ではそれに気づきにくいものです。水面の景色はどこも似ているからです。
AIが書く文にも同じ潮の流れがあります。もっともらしくつなげていく力があまりに強いので、書き出しは資料を見て書いていても、数文過ぎると資料にない内容へ流れていることがあります。だから文ごとに底へ綱をかけておきます。この文はあの資料のこの箇所につながっている、という具合にです。こうして発言を根拠につなぎ留めておく作業がグラウンディングです。
底にかける場所がなければ錨は空回りします。そんなとき船を無理に止めるのではなく場所を変えたり今日は無理だと認めたりするように、根拠がなければ話さないこともこの作業に含まれます。
2くわしく
もっともらしさは根拠より力が強いです
AIはここまで積み重なった言葉を見て次に来る言葉を選ぶ方式で文章を書きます。この方式は文をなめらかにつなげるのがとても得意です。問題はなめらかさと事実かどうかは別物だという点です。
だから資料をそばに置いてあげても、答えが資料の外に漏れることがよくあります。資料に書かれた三行を正確に写したあと、四行目で「したがって普通このような場合には」と自分の見当を付け足すような具合です。前後があまりに自然なので、読む人には境目が分かりにくいのです。
潮が船を押すように、つなげようとする力が文を資料の外へ押し出します。綱をかけておく作業が必要な理由です。
文ごとに綱をかけます
つなぎ留める最も一般的な方法は、文の横に出典を付けさせることです。答え全体に参考文献の一覧を付けるのとは違います。文単位でどの箇所から出てきたか示して初めて確かめられます。
指示で範囲を狭める方法も一緒に使います。「与えられた資料の中の内容だけを使い、資料にない内容は書かないでください」のように境界をはっきり決めておくのです。資料をそのまま写すべき箇所とまとめてよい箇所を分けて指示することもあります。
答えの形式を決めておく方法もよく効きます。主張を一行、その根拠になった原文を一行、並べて書かせれば、つながっていない文がすぐ目につきます。
かける場所がなければ話しません
いちばん難しい部分です。人にとってもAIにとっても「分からない」という答えはしたくない答えです。何も言わないより、もっともらしい一文のほうが役に立って見えるからです。
だから根拠がないときに何をするかをあらかじめ決めておく必要があります。資料になければないと答える、確かな部分と不確かな部分を分けて書く、確認が必要なら聞き返す、といったことです。こう決めておかなければ、モデルは空欄を自分が知っていた内容で埋めてしまいます。
業務では、この規則が答えの質より大事なことが多いです。間違った答え一つが正しい答え十個を無意味にすることもあるからです。
綱が本当にかかっているか確かめる
出典が付いているからといって安心はできません。番号は付いているのに原文が別の話をしている場合が思いのほか多いのです。似た話題の箇所がかかってくると、モデルはそれを根拠にしてしまいます。
だから確認が必要です。答えの中の数字、日付、名前、条件のように間違うと困る箇所を選んで原文と照らし合わせるのが基本です。規模が大きくなれば、答えの文と原文の箇所を自動で見比べてずれた箇所だけを人に回す方法も使います。
錨を下ろしたあとに手で一度引いてみる動きに当たります。引いてみなければ、かかった振りをして引きずられてくる錨に気づけません。
資料を探してくる作業とは別の段階です
資料を探してきてそばに置く方法には別の名前があります。RAG (Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成) です。よい場所に船を着ける作業に当たります。
グラウンディングはその次です。よい場所を選んでも綱をかけなければ船は流されます。よい資料を付けてあげても答えが資料の外に漏れることが起きる理由です。資料をうまく探してくる作業と、探してきた範囲の中だけで話させる作業は別に手当てする必要があります。
逆に、資料がなくてもグラウンディングを語ることができます。電卓が出した値やデータベース照会の結果に答えをつなぎ留めることも同じ作業です。根拠の種類が何であれ、発言と根拠をつなぐ綱があるかどうかが基準です。
3もう少し正確に
グラウンディングは、モデルの出力を外部の根拠に結びつけ、その範囲の中に制限する作業全般を指します。参考資料をプロンプトに入れることから、文ごとに出典を付けさせること、根拠と答えを照らし合わせてずれた文をふるい落とすことまでを含みます。もっと広くは、言葉を画像やセンサーの値、データベースのように言葉の外にあるものとつなぎ合わせることを指すこともあります。
たとえがずれる点があります。錨綱は引いてみればかかっているかどうかが手ごたえで分かりますが、モデルが付ける出典は見た目だけでは区別が付きません。実際には裏付けていない箇所にも番号が付き、複数の箇所を混ぜ合わせてどちらにもない文が作られることもあります。だから出典表示は確認を楽にする装置にすぎず、確認の代わりにはなりません。答えが根拠の中にとどまったかを照らし合わせる別の検査が一緒にあって初めて役目を果たします。
4やってみる
5よくある誤解
出典が付いていれば根拠が確認されたことだと思われがちですが、実際には原文がその話をしていないのに番号だけ付いていることがあります。
資料を付けてあげさえすればグラウンディングになると見なされがちですが、実際には資料をそばに置いても見当を付け足した文が紛れ込みます。
グラウンディングは検索と同じことだと思われがちですが、実際には検索は資料を持ってくる作業で、グラウンディングは発言をその資料につなぎ留める作業です。
7ひとこと要約
つまりグラウンディングは潮に流されないよう船に錨綱をかけるように、AIの発言の一つひとつを実際の根拠につなぎ留め、かける場所がなければ話させないようにする作業です。
誤りや、もっと良いたとえがありますか? 修正を提案する · 最終更新2026-09-02